病期Ⅰ-ⅢAの閉経後ホルモン感受性乳癌に対する術後内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬であるレトロゾール又はアリミデックスを5年間内服予定としている患者を対象として、アロマターゼ阻害剤に伴う骨量減少予防を目的とし、初回からデノスマブを6ヵ月毎に併用するデノスマブ投与群とコントロール群の効果を検討する多施設共同非盲検化比較試験である。海外ではABCSG-18試験においてデノスマブ群ではプラセボ群と比較して有意に骨量低下の抑制が示されてただけでなく、再発予防の傾向も認められた。本研究にてデノスマブによる骨量低下予防効果を日本人で評価することで、より安全に術後内分泌療法ができる可能性を検討する。また付随研究として免疫染色を用いてRANK,RANKL,OPGの発現を検討し、発現率と再発、生存との相関関係を解析する。
2016年10月承認
近年乳癌薬物療法においての新薬承認においては、治療効果予測因子となるバイオマーカー研究は必須となっている。組織のサンプルを採取しておくことで、将来、再発治療に有効なpasswayの発見につながる可能性もあり、組織サンプルを採取保存しておくことは非常に大切であると考える。術前化学療法症例においては、化学療法前後での腫瘍のheterogenietyの変化と予後の関係についても研究が進んでおり、化学療法前後でのサンプルを採取しておくことが必要である。
これらのサンプルを保存することによって、新規薬物のバイオマーカー研究におけるtissue bankとしても活用が期待できる。
2016年10月承認
本研究では非乳癌患者と乳癌患者の血清検体を用いて、そのペプチドプロファイリングの解析比較から特異的なバイオマーカーペプチドを同定する。
血清中に存在するタンパク質の断片であるペプチドは数百万種類が存在する。疾患によって特定のタンパク質の分解に差があり、ペプチドの量は疾患の有無や進行度によって異なっている。従来、血清を用いた解析では検体から主要タンパク質を除去する前処理工程が必須であり、その際にペプチドの多くが同時に処理されてしまう問題点を有していた。本研究で用いる株式会社プロトセラ社のBLOTCHIP®-MS法では前処理を必要とせず、電気泳動によってタンパク質とペプチドが分離されるため、生体内に存在しているままの状態で検体中のすべてのペプチドプロファイリングが可能になった。すでに同方法を用いて、大腸癌、食道癌、急性冠動脈疾患、うつ病などのバイオペプチドマーカーが同定されている。
2017年5月承認
乳癌領域において診断のために低侵襲で簡便な穿刺吸引細胞診断法が広く普及しているが、この診断は病理医が行うため、実際には病理医の勤務する施設は多くなく、時間を要する。また、良悪の鑑別困難や検体不適正を生じることがあり精度が高いとは言い難い。本研究では5-ALA(5-アミノレブリン酸)を細胞診に応用し、採取した細胞にex vivoで直接5-ALAを添加し蛍光観察することで癌細胞の検出を行う蛍光細胞診の有用性を調査する。通常の病理診断に対し、本法ではきわめて短時間で、高い精度の診断が可能である。病理医不在でもリアルタイムで診断可能な上、体外操作で患者負担はない。診断評価が短縮できれば、その後の乳癌治療を速やかに行えるため医療者側・患者側の双方の負担が軽減できる。さらにランニングコストも安価であるため医療費の低減にも寄与し、実臨床におけるメリットは大きいと予想される。
2017年12月承認
HER2陰性転移・再発乳がんに対する一次または二次治療としてエリブリンの使用が、既存薬に劣らぬ生命予後が得られ、健康関連quality of life(health-related quality of life:HRQoL)においてS1に対し非劣性であるか否かを検証する。
無増悪生存期間、全生存期間、治療成功期間、新病変出現までの期間、有害事象、 医療経済性、患者選好を比較する。
2017年4月承認
ビスホスホネート(BP)は骨粗鬆症治療薬としても現在も中心的な役割を果たしている。中でもゾレドロン酸は最も強力かつ持続的な骨吸収抑制活性を有するBP薬であり、わが国でも悪性腫瘍に伴う骨カルシウム血症や骨転移がんに対して用いられてきた(ゾメタ®)。そして2016年9月、ようやくゾレドロン酸年1回点滴静注製剤(リクラスト®)が骨粗鬆薬治療薬として国内認可を受けた。
我々は既に、日本人閉経後乳癌患者でアロマターゼ阻害剤(AI)を使用する場合にデノスマブを併用し、骨密度上昇に関する前向きのエビデンスを日本で初めて報告した。しかし、BP薬のリクラストが同様の効果を示すかは不明である。今回BP薬を使用した前向き観察研究を行うことによって、AI剤関連骨量減少に対する治療に新たな選択肢を提供できる可能性がある。
2018年11月承認
N0乳癌ではセンチネルリンパ節にマクロ転移が認められても、薬物治療と放射線治療を術後に行うことでリンパ節再発は予防されることが報告された。N1乳癌においても術前化学療法が有効と考えられるycN0乳がんであれば、センチネルリンパ節生検によって腋窩の手術の個別化が可能となる可能性がある。術前化学療法後センチネルリンパ節生検の偽陰性率が10%以下であるならば、リンパ節郭清省略による術後のQOLの向上が期待される。浸潤性乳癌を対象に術前化学療法後のycN0症例におけるセンチネルリンパ節生検の偽陰性率を評価することからセンチネルリンパ節生検による腋窩治療の個別化を検討する。
2018年9月承認
病期Ⅰ-ⅢAのホルモン感受性乳癌患者の術後内分泌療法を行う患者を対象として、内分泌療法に伴う骨強度の推移を超音波骨密度測定装置LD-100により検証する。日常診療に加え、質問紙による情報収集、LD-100による骨密度測定を行う。
2018年11月承認